【特集2】特約店の支援体制を強化 幅広いサービスで差別化狙う

【ジクシス】

LPガス元売り大手のジクシスは、全国の特約店に向けた支援体制を一層充実させている。販売・マネジメントに関する研修を中心に、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進やガス以外のサービスの拡充などにも注力。特約店の担当者と密にコミュニケーションを取りながら、事業所ごとの課題や潜在的ニーズを把握し、実効性の高いサービスを提供している。

販売・マネジメント研修では、顧客ニーズの把握などの営業の基礎から燃料転換やガス機器販売の提案力向上まで、幅広いテーマを扱う。特に好評なのが人材定着と職場活性化を狙った「マネジメント研修」だ。チームビルディングや部下の意欲を引き出すコミュニケーション術を学ぶもので、「退職を考えていた若手が思いとどまった」「離職率が下がった」といった成果が出ている。参加者は主に管理職層だが、「社内の共通言語として、若手や他部門にも受講させたい」と、個別での開催要望が寄せられるほど高い評価を得ている。

各種研修は参加者から好評だ

保安研修にも力を入れている。「セーフティ・アンド・クリーンチェック」は研修と審査を組み合わせ、書類や記録の管理状況だけでなく、現場での運用実態まで確認。業界内でも例を見ない細やかさで、「立ち入り査察より細かいと言う保安責任者もいるほど」だという。

DXツールで現場効率化 暮らし支援で認知度向上へ

配送や保安などの現場業務は「きつい」というイメージを持たれやすく、人材確保に苦戦している特約店は多い。こうした現状から、LPガス業界全体としてDX推進が急務となっている。実際に「DXの必要性を感じながらも、どこから着手すればいいか分からない」といった相談が多く寄せられている。

それに対して同社は特約店の業務や規模に合わせ、最適なデジタルツールの導入を支援している。今年提供を開始した配送ルート最適化サービス「Routify」(ルーティファイ)は、顧客ごとの過去の使用量履歴や気温データをもとにAIが残量を予測し、自動で配送ルートを作成。これにより、従来は配送担当者の経験や技量に依存していたルート作成業務を新人やエリア変更直後の社員でも短時間で作成することができ、大幅な業務効率化を実現した。

さらに、ガス品質が横並びである中での差別化策として、暮らし全般を支えるサービスの導入も進めている。その一例が、いわゆる駆け付けサービスにあたる「くらしのホッとサポート」や、飲食店をはじめとした各種優待サービス「くらしのベネフィット」などの「くらしシリーズ」だ。日常をサポートすることで、顧客からの認知・プライオリティーを向上する狙い。同社のサービス担当者は「検針の時に限らず、特約店であるガス会社を思い浮かべてもらえるようになる」とその意義を語る。

同社は「選ばれる特約店づくり」に向け、ガスの枠を超えた価値提案で現場を支え、地域密着型特約店の競争力を着実に高めていく。

【特集2】料金の透明化へ行動指針策定 不動産業界にも対応要請

商慣行是正に向け不動産業界との連携を進める全L協。次世代燃料の実用化では、産学官一体で取り組む構えだ

インタビュー/山田耕司(全国LPガス協会会長)

―商慣行是正のための新たな規律が設けられました。

山田 業界全体の健全な発展と、消費者から選ばれるエネルギーとなるために不可欠であると認識しています。今回の制度改正を受け、業界自主ルールの該当箇所を改訂するとともに、LPガス販売事業者による「取引の適正化・料金の透明化に向けた行動指針」を策定し、この指針を参考に、全L協ウェブサイトにて自主取組宣言を公表した販売事業者一覧などを掲載しています。事業者のみならず、賃貸住宅オーナー・管理会社、消費者にご理解いただけるよう努めています。

―他業界とはどう連携していますか。

山田 賃貸住宅の入居希望者に対し、オーナー、不動産管理会社、不動産仲介事業者などと連携し、LPガス料金に関する情報を事前に提供しています。しかし、不動産・集合住宅のオーナーからLPガス販売事業者への設備貸与要求が依然としてあります。そこで、4月15日に国土交通大臣と面談し、不動産業界の法令順守に向けた取り組みの強化を要望しました。

―第7次エネルギー基本計画におけるLPガスの位置付けをどう認識していますか。

山田 「S+3E」(安全性、安定供給、経済性、環境適合)の実現に大きく寄与するエネルギーとして重要性が再認識され、活用が推進されると認識しています。災害大国日本においてはその価値がより高まるとともに、また、環境負荷の低さから、日本のエネルギーミックスに不可欠な存在として位置付けられたと考えています。

―グリーンLPガスが、次世代燃料として位置付けられています。

山田 大量生産技術は未確立で、コストや原料の安定的確保などに課題があります。そのため、政府、企業、研究機関が一体となり研究開発を進め、着実な実証を踏まえて制度設計やインフラ整備などを推進していくことが不可欠です。カーボンニュートラル(CN)実現に向け、30年以降の実装への加速化が大きく期待されています。

―LPガスのサプライチェーン全体において、要望はありますか。

山田 設備の老朽化対策や災害用LPガス設備の導入などに国の補助金が必要です。また、中小LPガス販売事業者の事業継続支援や効率的な物流支援システム、遠隔監視システムなど業務効率化対策への政策支援をはじめ、高効率ガス機器導入補助金の継続・拡大が求められます。

やまだ・こうじ 1997年4月ダイプロ(大分市)社長、20年4月に同社会長に就任。2013年5月から大分県LPガス協会会長を務める。2022年6月から現職。

【特集2】消費者に選ばれるエネルギーへ 省令改正への対応を推進

液石法の省令改正を契機に、LPガス業界が一丸となって対応に乗り出した。災害時のレジリエンス向上においても、一層の貢献が期待される。

LPガス業界は、2024年7月に施行された液化石油ガス法(液石法)の省令改正を受け、大きな転換期を迎えている。

この改正により、LPガス事業者に設備機器の無償貸与などを禁じる「過大な営業行為の制限」、料金体系や契約内容の明確な説明を義務付ける「料金などの情報提供義務」への対応が求められるようになった。今年4月には、料金を基本料金、従量料金、設備費用に分けて表示する「三部料金制の徹底」が義務付けられている。

業界自主ルールを改定 事業者の法令順守を推進

全国LPガス協会は、省令改正を業界全体の健全な発展と消費者から選ばれるエネルギーになるために必要不可欠と受け止め、取り組みを進めている。業界自主ルールの該当箇所を改定し、販売事業者による「取引の適正化・料金の透明化に向けた行動指針」を策定。ホームページに法令順守に向けた自主取組宣言を公表した販売事業者一覧を掲載している。このほか、不動産業界と連携し、賃貸住宅の入居希望者にガス料金に関する情報を事前提供する。

消費者に選ばれるエネルギーを目指す

これを受け、個々の事業者は、料金表示の明確化、設備料金に該当する費用の個別表示に取り組むなど、料金体系の透明性向上、消費者への情報提供強化に奮闘している。

今後も選ばれ続けるエネルギーになるためには、販売事業者のサービス向上も欠かせない。その一例として鳴門ガス(徳島県鳴門市)は、顧客視点に立った「即湯サービス」という独自の取り組みを展開している。

ガス給湯器が故障した時には、ガス販売事業者が給湯設備を交換して対応するのが一般的だ。だが、電気や灯油などの給湯器では、そのような対応は通常行われていない。同社はガス給湯器のみならず、オール電化のヒートポンプ給湯機(エコキュート)や灯油ボイラー、電気温水器の故障に対しても、すぐに仮の給湯器を設置しお湯を使えるようにするサービスを提供している。このような顧客との出会いを新たな販売チャンスにつなげている。

一方、災害大国日本には、防災・減災対策としてLPガスが不可欠だ。今回の特集では、富士瓦斯の発電機、I・T・Oの防災設備を例に、可搬性、備蓄性といったLPガスの優位性を災害時のライフライン確保に活用する取り組みを紹介する。

【特集2まとめ】LPガス業界の転機と商機 事業激変時代を生き抜く戦略

経済産業省は昨年7月、液化石油ガス法の改正省令を全面施行した。
三部料金制の徹定や工務店などへの利益供与の禁止など

LPガス業界で長年続いてきた悪しき商慣行にメスを入れたのだ。
この省令改正は、事業者に大きなインパクトをもたらした。
業界を挙げて対策に取り組んでおり、まさに一大転機を迎えている。

一方で、このタイミングを見計らって事業拡大を狙う事業者もある。
LPガス激変時代をどう生き抜いていくのか。その戦略に迫った。

【アウトライン】消費者に選ばれるエネルギーへ 省令改正への対応を推進

【インタビュー】料金の透明化へ行動指針策定 不動産業界にも対応要請

【座談会】独自の販売戦略で難局を乗り切る 地域密着で顧客満足を追求

【レポート】燃料油からの燃料転換に注力 販売特約店との連携深める

【レポート】特約店の支援体制を強化 幅広いサービスで差別化狙う

【レポート】災害に強いハイブリッド発電機 日本のレジリエンス向上目指す

【レポート】災害時も空調の稼働を継続 熱中症対策と避難所機能を両立

【インタビュー】ブローカー対策に手応え 消費者への注意喚起に注力

【トピックス】Jークレジット制度を活用 パビリオンのCO2排出量を実質ゼロに

【トピックス】双方向通信端末の導入進む 社内外でDX化の推進に寄与

【トピックス】ボンベの運搬をスムーズに 現場ニーズに応えた電動台車を発売

インフォメーション

岩谷産業

次世代エネ技術や新製品を披露

岩谷産業は6月26、27日、同社中央研究所・岩谷水素技術研究所(兵庫県尼崎市)で「イワタニR&Dフォーラム」を開催した。同研究所の研究内容を年1回公開するイベントで約500人が来場した。グリーンLPガスの分野では分析技術を紹介した。グリーンLPガスはバイオガスや合成ガスなどの総称で、さまざまな原料から製造する。このため、従来のLPガスでは存在しない物質を含有しており、解析する必要がある。同研究所では既存の分析法のほか、不純物に対応した新たな分析技術の開発も行っているという。このほか、水素や溶接の新技術、カセットコンロの新製品なども展示した。

コージェネレーション・エネルギー高度利用センター(コージェネ財団)

新時代のエネルギー政策をテーマに講演会開催

コージェネ財団は7月10日、「特別講演会2025」を開催した。この中で、柏木孝夫理事長をモデレーターにしたパネルディスカッションが行われ、国際環境経済研究所の竹内純子氏は「日本はコージェネの活用においてアドバンテージがある。低炭素、省エネで世界にどれだけ貢献できるのか発信してほしい」、カーボンニュートラル推進協議会の増山壽一代表理事は「開発途上国では大規模発電所を建設して電力供給することは現実的ではない。コージェネのような分散型電源が今後も世界で求められるはずだ」など、コージェネ技術を世界に向けて情報発信すべきとの発言が相次いだ。

シーメンス・エナジー

国内グリーン水素プロジェクトに電解装置が採用

シーメンス・エナジーは7月3日、固体高分子膜(PEM)電解装置「Silyzer P300」が日本国内のグリーン水素プロジェクトに採用されたと発表した。同プロジェクトはやまなしハイドロジェンカンパニー(YHC)を中心に、地域に根ざした水素エコシステムの構築を目指している。今回、福島県田村市の半導体産業向け石英ガラス工場に本格導入し、年間最大1900tのグリーン水素を製造する。PEM型電解装置は、太陽光や風力などの再エネ電力を使って、水を水素と酸素に分解。迅速な起動と柔軟な運用が特徴で、再エネの高い変動性にも対応することができる。

三菱化工機

地域の社会課題を解決する新プロジェクト発足

三菱化工機は7月3日、社会課題解決ソリューションやビジネスモデルの創出を目指すプロジェクト「MKK PROJECT」を発足させた。川崎市をはじめ神奈川県に所在する企業や団体を中心とする多種多様な共創パートナーと、水素やバイオマスなどによる地域循環型エネルギーシステムの開発供給とこれらの需要開拓を両輪で推し進めていく意向を示す。

三菱ガス化学

直接メタノール型燃料電池を出展

三菱ガス化学は7月、東京ビッグサイトで開催した「地域防災EXPO」において直接メタノール型燃料電池を出展した。同技術は水素を外部から供給せず、メタノールを燃料として直接反応させ電気を取り出す。再エネ由来のメタノールを利用することで有害物質の排出を抑えつつ、CO2削減が可能となる。水素を貯蔵しないため小型軽量な製品開発に寄与する。

アストモスエネルギー

販売店などを表彰するグランプリ2024を開催

アストモスエネルギーは7月9日、事業活動で優秀な成績を収めた特約店などを表彰する「アストモスグランプリ2024」を都内で開催した。山中光社長は冒頭で「エネルギー基本計画で初めてグリーンLPガスが明記された。大きな責任を負うとともに大変なチャンスだ」と挨拶した。燃料転換やカーボンニュートラル部門など47の事業所が表彰を受けた。

【特集2】燃焼ガスの潜熱を回収して活用 業界最高のボイラー効率103%を実現

【川重冷熱工業】

川重冷熱工業は4月、小型貫流ボイラー「WILLHEAT(ウィルヒート)」シリーズの高効率モデル・潜熱回収型小型貫流ボイラー「WF―3000GLX」を発売した。ウィルヒートシリーズの特長は、高いボイラー効率に加え、燃焼と給水にPID(比例・積分・微分)制御を採用することで、蒸気圧力を安定させることにある。さらに独自構造の気水分離器により高い乾き度を実現した。新製品はこうした従来機の特性を引き継ぎつつ、燃焼ガスの潜熱を回収する。これにより、都市ガス(13A中圧)専焼の小型貫流ボイラーとしては業界最高の定格時ボイラー効率103%を達成した。

ウィルヒートWF―3000GEX


また、新たに開発した潜熱回収器をボイラー上部に配置したことで設置面積を抑え、複数台を導入する際の省スペース化に対応した仕様だ。


このほか、大型貫流ボイラー「Ifrit(イフリート)」は、高圧で大容量の安定した蒸気を供給できる。23年からは、水素専燃、水素・LNG混焼、LNG専燃の3モードの燃焼バーナーを搭載。燃料別によって燃焼モードの切り替えが可能になった。これにより、水素導入初期段階から普及後までを見据えた、カーボンニュートラルへの取り組みに貢献する。用途や目的、環境負担に配慮したボイラーメーカーの進化は止まらない。

【特集2まとめ】今こそガス燃転を考える 再浮上する低炭素の現実解

低炭素化を図る現実的な手段として天然ガス転換が再び注目を集めている。

国内の工場や事業所では石油や石炭などCO2排出量の多い燃料から、

どのように切り替えていくべきかを検討するタイミングが訪れている。

再エネと電気設備を組み合わせ、一足飛びに脱炭素化を目指す動きもあるが、

設備コストや導入条件など、さまざまな面で課題が山積する。

こうした中、現実的な方策となるのがガス体エネルギーによる低炭素化だ。

事業者やメーカーはどのように取り組んでいるのか、最前線に迫る。

【アウトライン】ガス体エネルギーの優位性発揮 CO2大幅削減へ各社が注力

【レポート】燃料転換と高効率利用を推進 天然ガスで効果的な温暖化対策

【インタビュー】新たな需要創出に期待感 ニーズに応じ政策検討

【レポート】技術的な知見伝承を重要視 小規模ユーザーへの提案も積極化

【レポート】現場力生かす方針にシフト 全体最適化で燃転を後押し

【レポート】サテライトでLNG供給 重油比でCO2を3割削減へ

【トピックス】高効率ボイラーと複数台制御が強み IT応用でエネ設備や工場全体を管理

【トピックス】燃焼ガスの潜熱を回収して活用 業界最高のボイラー効率103%を実現

【トピックス】燃料品質で燃焼具合が代わるバイオマスボイラー 独自設計で連続運転や高効率運転を可能に

【レポート】船舶へのLNG供給体制を整備 脱炭素化への国内モデル確立へ

【レポート】鍵握るバーナーの燃焼技術 供給拠点整備でガス・ガス転換

【特集2】ガス体エネルギーの優位性発揮 CO2大幅削減へ各社が注力

低炭素化戦略の一丁目一番地は重油・石炭利用をガス化することだ。この燃料転換を巡る各社の取り組みが加速している。業界の動向を追った。

「手っ取り早く実現するには、重油や石炭といった環境負荷の高い化石燃料から天然ガスなどの環境に優しいガス体エネルギーへ燃料転換すること」。ガス各社は低炭素化に向けた戦略についてこう口をそろえる。


もちろん、電化への転換もオプションとして存在する。しかし、電化では対応が難しく、化石資源の燃焼によるバーナーやボイラー、コージェネレーションを必要とするケースではガス体への転換が最短ルートだ。


短期的にはこれまで通りガス利用を進め、長期的にはe―メタンによって既存のインフラを活用したコストミニマムな脱炭素戦略につなげていく。


こうした取り組みは、ガス業界に限った話ではない。茨城県の鹿島コンビナートに製造拠点を構え、穀物を加工する昭和産業は、これまで石炭燃料を活用していたが、近隣まで整備されていた都市ガスインフラを活用し、ガス転換を実施。7800kW級のガスエンジンを活用し、CO2削減につなげた。この提案を行ったのは、東京電力系の事業者だ。昭和産業はその後、第二弾の転換を実施。さらに大型のコージェネを導入しCO2を大幅に削減したことでコージェネレーション・エネルギー高度利用センター(柏木孝夫理事長)から優良事例として評価された取り組みでもある。


同社がe―メタン導入を視野に入れているかどうかはさておき、ガス転換は必ずしもガス会社の専売特許ではない。

各社がLNG基地を整備してきた


東北電力グループの東北天然ガスは、自社のホームページで「クリーンエネルギーでサステナブルな社会に~クリーンエネルギーの輪を東北地方に拡げるために、天然ガスの供給を推し進めます」とうたっている。このように電力系各社は、親会社のガス火力に併設されるLNG基地を供給拠点に、タンクローリーによるLNG転換を進めている。

大規模転換でCO2削減 競争力のある燃料価格

前述の昭和産業のように、石炭からの切り替えは基本的には大規模転換となる。その分、CO2削減効果も高い。


こうした事例は九州・宮崎県でも実現している。太平洋に面する旭化成の工場では、LNG小型船の受け入れ設備からエネルギー利用設備までをエネルギー事業者が整備した。また、西日本の瀬戸内海沿岸では、愛媛県にある製紙・パルプ大手の大王製紙の工場がガス転換を実施している。


業界関係者は「低炭素化を目指す山口県や広島県の名だたる化学系企業の大口ユーザーが、自家発を含めた設備について石炭などからガスへの燃転を検討している。インフラ未整備エリアなので、投資決定の暁には、地元ガス会社が導管を延伸することになるだろう」と話す。これにより、広域での大幅なCO2削減が期待されている。


中規模事例に目を向けると、新たな環境変化も生まれているようだ。「LNGをローリーで調達してサテライトで利用する燃料転換を決断した。CO2削減効果だけでなく重油価格と遜色がなくなってきていることも転換を決断した要因だ」。こう話すのは、最近ガスへ転換した福井県の化学メーカー・田中化学研究所の関係者だ。いくらCO2を削減できるとしても燃料価格が高ければ難しい。


価格競争力が生まれている背景には油価動向だけでなく、ここ10年近くにわたって、各地で供給拠点となるLNG基地インフラが増強、あるいは新設されてきた事情がある。そのエリアとしては、北海道石狩市(北海道電力、北海道ガス)、青森県八戸市(ENEOS)、宮城県仙台市(東北電力)、福島県新地町(石油資源開発、福島ガス発電)、茨城県日立市(東京ガス)、富山県射水市(北陸電力)、大阪府堺市(大阪ガス)、愛知県知多市(東邦ガス)、福岡県北九州市(ひびきエル・エヌ・ジー)が挙げられる。

稼働率が上がっている出荷レーン


既存の基地と併せて空白地帯が少なくなってきたことで、コストを押し上げる要因だったタンクローリーによる輸送距離が短縮された。「これまで不可能だったエリアへの展開が可能になった。裏を返せば競争も活発化している」(大手エネルギー事業者)


多様なプレイヤーによる、ガスVSガスや電力VSガスといったエネルギー間競争は、国が描く低炭素化と産業政策を両立するものでもあり、今後のさらなる燃転につながる可能性がある。

既存ガス管利用こそ最適 地方と大手の連携に注目

既存のガス本管からわずかな距離の枝管による燃転こそが最もリーズナブルである。ここで主役となるのはガス会社だ。こうした取り組みでは、大手と地方各社の連携が一つのポイントとなる。


「例えば、大手がエネルギーサービスを実施して設備運用を担う一方で、地元の地方ガス会社が都市ガスを供給するケースは多い」(地方ガス関係者)。燃転に伴う人員や技術を持ち合わせない地方ガス会社にとって、資本力のある大手からの協力は欠かせない。さらに、ガスの需要拡大にもつながることからウィンウィンな関係となる。こうしたスキームによる展開の行方が注目される。


一方、地方ガス会社独自で燃転を実施したケースもある。秦野ガス幹部は自らの経験を踏まえ、「どのようなガス設備によってどのように製品を作り出すのか、モノづくりの現場を知るきっかけとなった。そうしたノウハウや技術を大きな財産として、しっかりと若い世代に伝えていきたい」と話す。


さまざまな事情を抱えながら脱炭素をブームに終わらせない地道な取り組みが各地で進んでいる。それはモノづくりを含めた日本の産業を支える各社の挑戦でもある。

【特集2】新たな需要創出に期待感 ニーズに応じ政策検討

政府は、CN実現後も重要なエネルギー源と位置付けた。天然ガスのさらなる普及拡大へ政策の方向性を聞いた。

インタビュー/迫田英晴(資源エネルギー庁ガス市場整備室長)

―産業用分野のエネルギーの脱炭素化には、天然ガス転換は欠かせません。


迫田 天然ガスは熱源として非常に効率がよく、他の化石燃料と比べてもCO2排出量が少ないという点で非常にメリットがあります。社会全体のカーボンニュートラル(CN)化を実現するには、需要サイドで石炭、重油から天然ガスへの転換をしっかりと進めていく必要があると考えています。


―第7次エネルギー基本計画で、2050年を超えても重要なエネルギーと位置付けられたことは大きな後押しです。

迫田 LNGは長期契約が主体ですし、需要家も10数年単位の長期的な視点で設備投資を判断しなければなりません。ですが、今はエネルギー情勢が大きく変化し不確実性が高まっています。そこで事業者の予見性を高めるため、国全体の方向性を示したのが今回のエネ基です。これを機に、ガス事業者が産業用需要家との対話を一層前向きに進めることで、安定供給と低・脱炭素化のニーズに応えていけると期待しています。


―ポテンシャルをどう見ていますか。


迫田 鉄鋼や化学、紙パルプやセメントといった分野で、燃転により大きなガス需要が生まれるポテンシャルがあると見ています。ただし大きな経営判断を伴いますので、ガス事業者がしっかりと対話していく必要があるでしょう。


―天然ガス普及拡大のためのインフラ投資への支援についてはいかがですか。

迫田 一般的にポテンシャルがあるとは言っても、需要家がどこまで対応するのかなどによって求められる政策ニーズは異なります。これまでは徐々に燃転が進み、事業者が個々に対応してきましたが、エネ基を機に事業者と需要家の対話が加速することも考えられます。そうした対話を通じて出てきた課題について耳を傾けながら、必要に応じた措置を検討していく方針です。パイプラインを新設するにしても、託送料金に影響することになりますので、ポテンシャルを精緻に見極めながら対応していくことになります。


―地方ガスの役割をどう考えますか。


迫田 地域社会に根差し、自治体とも連携を図りながらガスの供給だけではなく街づくりに関与し生活インフラ事業を展開していることは大きな強みです。だからこそ、大手と一体となったe―メタンの導入や、地域の実情を踏まえた資源循環の仕組みの構築など、CNの観点を踏まえた地方創生で大きな役割を果たせると考えています。

さこた・ひではる 2004年東京大学経済学部卒、経産省入省。電力・ガス取引監視等委員会取引制度企画室長、資源エネルギー庁電力供給室長、内閣官房新しい資本主義実現本部企画官などを経て25年7月から現職。

【特集2】燃料転換と高効率利用を推進 天然ガスで効果的な温暖化対策

【日本ガス協会】

日本ガス協会はCO2排出量削減の新たな目標を発表した。「業界全体で一体感を持ちながら取り組むことが鍵」とみる。

日本ガス協会は今年6月、新たな未来像「ガスビジョン2050」とその実現のための具体的な取り組みを示した「アクションプラン2030」を発表した。その中で、CO2排出量を13年度比で1800万t削減するという新たな目標を掲げている。


前回、ビジョンとアクションプランを策定してから約4年が経過。その間、戦争勃発による地政学リスクの顕在化、データセンター建設などによる将来的な電力需要の増加、自然災害の激甚化など、業界を取り巻く環境は大きく変化した。また第7次エネルギー基本計画において、天然ガスは「トランジション期だけでなくカーボンニュートラル(CN)実現後も重要なエネルギー源」として位置付けられた。CN化とそれに向けたトランジションの手段としての重要性が公に認められた格好だ

「アクションプラン2030」より


こうした変化を踏まえ新たに策定された目標には、CO2の持つ性質も反映されている。排出されると長期間大気中に留まり地球温暖化を進展させてしまうという特性から、地球温暖化の抑制には、排出量を「断面」ではなく過去からの累積量という「面積」で捉えることが重要だ。天然ガスは化石燃料の中でCO2排出量が最も少ない。石油や石炭から天然ガスに転換することで、CO2累積排出量を足元から抑制できるため、温暖化対策として極めて効果的な方法である。

燃料転換をさらに推進 業界一丸で取り組む

同協会は目標達成に向け、燃料転換と高効率ガスシステムの導入拡大に注力していく方針だ。工業・業務用では重油や石炭から天然ガスへの燃料転換などをさらに進め、家庭用ではエネファームやエコジョーズの高効率給湯器の導入などで省エネにも取り組む。さらに、コージェネレーションやガス空調、燃料電池などのガスシステムの活用と再生可能エネルギーを組み合わせたZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)やZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の普及拡大にも注力する。


これまでも進めてきた燃料転換をさらに一歩前進させるため、「キーワードは一体感」と語るのは、同協会普及部の藤田尚樹エネルギーシステム企画担当部長だ。全国に約190ある地域特性や企業規模もさまざまな都市ガス事業者が志を一つにして取り組むことで、全体としての底上げを図りたいという。


これまでの燃料転換は、規模が大きな都市ガス事業者だからこそ達成できた事例が多い。技術力や人的リソースなどは事業者ごとの差が非常に大きい業界だ。「事業規模や供給エリアなどにかかわらず、業界全体で同じ目標に向かい、各事業者ができる取り組みを増やし、それぞれの役割を果たせるようにサポートすることが日本ガス協会の重要な役目」と力を込める。


今後の大規模工場の燃料転換案件はガスインフラがないなど、さまざまな課題があり容易ではないが、大手が軸となり推進していく。その一方で、地方の中小ガス事業者は、地域のニーズに合わせたソリューション提供を行う地域密着を強みとする。省エネ診断や提案、エネファームなどの高効率給湯器普及拡大、再エネや証書を組み合わせたCN化の支援、環境価値の創出など、挑戦できるものは多い。


そこで今回のアクションプランでは、地方ガス事業者でも提案が可能な多様な手段を盛り込んだ。省スペース・省コストの特徴がある高効率給湯器を既存の集合住宅で従来型給湯器から置き換える事例や、少人数・都市型住宅へ新規導入する事例などを挙げている。その結果、アクションプランは大手ガス事業者によるスケールの大きな取り組みから、家庭を対象とした事例まで網羅するものとなった。

事業者の使命実現に貢献 ガスのCN化へまい進

同協会では今後、個々の事業者の事業ポートフォリオや事業環境を十分理解し、それぞれの事業者に適した支援を提供していく。


藤田部長は「都市ガス事業者の使命はお客さまに最適なソリューションを提供し、豊かな暮らしの実現、社会・産業・地域の発展、カーボンニュートラル化に貢献していくこと。業界全体としてそれが可能になるよう尽力していきたい」と話す。

天然ガスをさらに活用し、燃料転換や高効率ガスシステムの導入などによる徹底した省エネを推進していくことで、低炭素化の実現に貢献する。また、社会コストを抑えたe―メタンへのシームレスな移行を中心に新技術を積極導入する。


その時々の最適な手段を用いて、ガスのCN化を着実に進めていく構えだ。

【特集2】現場力生かす方針にシフト 全体最適化で燃転を後押し

【静岡ガス】

静岡県は製紙、化学、金属などのエネルギー多消費型産業が集積する地域だ。中でも東部に位置する富士市は国内有数の製紙業拠点として知られている。


この地で都市ガスへの燃料転換をけん引してきた静岡ガスはこれまで、自社導管が整備された県中心部を軸に、LPガスやA重油、灯油を使用する事業者への燃転を着実に進めてきた。導管が及ぶエリアでは開拓が一巡し、現在はさらに踏み込んだ提案に軸足を移している。


注目されるのは、石炭やC重油といった高炭素燃料からの転換だ。特に製紙業は、乾燥工程などで大量の熱や蒸気を要するため、「長時間・高出力」の燃焼が可能な高炭素燃料が長らく使用されてきた。熱量単価の低さや既存設備との親和性もあり導入が進んだが、脱炭素の機運の高まりを背景に都市ガスへの転換を検討する企業が徐々に増えている。


ただ、石炭専焼のボイラー設備などは都市ガスや液体燃料への転換に対応していないケースも多い。転換には数千万円から数億円規模の初期投資や工場の稼働を一時的に停止するなどの調整も必要となる。営業本部産業エネルギーグループの森拓也リーダーによると、「お客さまは、環境対応への必要性は認識しているものの、すぐに決断するのは簡単ではなく、将来を見据えた判断が必要とされる」という。

工場内の改善余地を可視化 補助金案示し負担を軽減

こうした顧客の課題や要望に応えるには、より実情に即した、きめ細かな提案が欠かせない。同社では対応力を高めるため、燃料転換の体制を従来の営業主体から、グループのエンジニアリング会社を含めた構成へとシフトした。

きめ細やかな提案を行う


静岡ガス・エンジニアリングの永野光訓氏は、「設備導入や保守を担ってきたノウハウをもとに、お客さまの工場の全体像を把握した上で、改善の余地を見極めた提案ができる」と強みを語る。例えば、工場内のエネルギー使用状況を可視化。どこで無駄が生じているかをデータで示すことで、省エネのポイントを明確にし、それが燃料転換でどう改善されるのかを提示する。こうした積み重ねが、顧客との信頼関係の構築につながっているという。


初期投資の負担についても支援を強化する。通常は設備メーカーが行うバーナー更新作業などの一部を代行することで費用を削減。その他、顧客が把握しきれない補助金制度の中から最適な組み合わせを提案し、導入ハードルの軽減につなげている。


「エンジニアリングの強みも生かしつつ、性能・環境・保守を含めたトータルパッケージで対応していく」と、森リーダーは言う。永野氏も、「工場にはガス設備だけではなく、電気系統や圧縮空気配管など多様な設備がある。当社グループは工場全体のユーティリティの最適化を図る提案をすることで、地域のカーボンニュートラル化に貢献したい」と意欲を見せる。


全体を見渡す視点と、現場に寄り添う対応力を武器に、静岡ガスは次なる燃転ステージへと歩を進める。

【特集2】船舶へのLNG供給体制を整備 脱炭素化への国内モデル確率へ

【大阪ガス】

大阪ガスが海運業界でのLNG燃料転換を本格化させている。バンカリング事業を通じて海運業界の低・脱炭素化に貢献していく構えだ

大阪ガスは船舶のLNG燃料転換を後押しするため、LNGバンカリング(燃料供給)の体制整備に注力している。海運業界では国際海事機関(IMO)が2023年7月、50年までにGHG(温室効果ガス)排出を実質ゼロ、30年までに08年比で20~30%削減するとの目標を発表した。これを受けて、低炭素燃料としてLNGのニーズが高まっている。世界的にLNG燃料船の導入が進んでおり、稼働中と建造中の船舶を合わせると現在、世界で約1000隻超まで増えているとのことだ。LNGバンカリングの拠点は欧州やシンガポールで整備が進んでおり、この動きに追随する形で、国内でも供給インフラの整備が急がれている。


LNGバンカリングには主に三つの方式がある。一つ目はTruck to Ship方式だ。これは岸壁に駐車したタンクローリーからLNGを供給するもので、大型船の離着岸をサポートするタグボートやフェリーなど中小規模船舶の供給に適している。大ガスは19年からグループ会社のDaigasエナジーを通して、商船三井のグループ会社である日本栄船が運航するLNG燃料タグボート「いしん」に同方式で燃料を供給している。


二つ目のShore to Ship方式では、岸壁に係留中の船舶に対して陸上のLNGターミナルから直接LNGを供給する。LNG基地の設備があれば、大規模な設備投資を必要とせず活用できるのが利点だ。


大ガスは今年4月、同方式による供給を開始。同社泉北製造所第二工場(大阪府高石市)で商船三井が運航するJFEスチール向けのLNG燃料鉄鋼原料船「VERDE HERALDO」への供給を実現した。このように二つの方式はすでに事業化している。

Shore to Ship方式でのバンカリング

船で停泊地まで輸送 荷役作業中の供給が可能に

LNGバンカリングの普及に向け、本命となるのが三つ目のShip to Ship方式だ。バンカリング船にLNGの積み込みを行い、LNG燃料船の停泊地まで輸送。横付けしてLNGを供給する。


特に大型コンテナ船や自動車運搬船などは、時間管理が厳格であり、港湾に長時間停泊する余裕が少ない。同方式であれば、荷役作業中に効率的に補給を終えられる。

Ship to Ship方式での供給イメージ

LNGバンカリングを担当する資源トレーディング部テクニカルチームの山田裕久ゼネラルマネジャーは「この方式なら航路スケジュールへの影響を最小化できる。大ガスの製造所で積み込んだLNGを、大阪湾や瀬戸内地方に寄港するLNG燃料船を対象に供給していく計画だ」と説明する。


同社100%子会社の大阪ガスインターナショナルトランスポートは、NSユナイテッドタンカー(NSUT)、阪神国際港湾とともに「大阪湾LNGシッピング」を設立。同社がバンカリング船を建造・保有し、NSUTにリースする。大ガスはLNGをLNG燃料船の運航会社に販売。NSUTは大ガスから輸送委託を受けて、運航・管理を行う。

LNGバンカリングの供給スキーム

タンク兼用で設備簡素化 運用面の高効率を実現

バンカリング船は全長86・29m、LNGタンクの容積は約3590㎥、LNG払出能力は毎時約1000㎥の規模を有し、同船自体もLNGを燃料として航行する。LNGタンクはType-C方式を採用し、再液化装置が不要。1基のタンクから供給と自航用の燃料を賄う。タンク内の気化ガスは自然圧で気化し、エンジンへと送られる。これにより設備の簡素化と高い運用効率を実現している。同船は下ノ江造船(大分県)が建造中で、26年度上期の事業開始を目指す。


「将来的にはバンカリング船の複数体制による冗長化やShore to Ship方式との組み合わせによる安定供給体制の強化を計画している。また、50年GHG実質排出ゼロに向け、e―メタン(合成メタン)への切り替えも視野に入れている。LNGインフラをそのまま活用できるのは利点だ」。山田ゼネラルマネジャーはこう強調する。

「安定供給を目指す」と山田氏


海運業界の脱炭素化に向けて、産業が集積する大阪・瀬戸内発のLNGバンカリングの取り組みは国内モデルの確立と国際競争力強化において果たす役割が大きい。船舶燃料としてのLNGにも、さらに関心が高まりそうだ。

【特集2】高効率ボイラーと複数台制御が強み IT応用でエネ設備や工場全体を管理

【三浦工業】

高効率ボイラーとITを融合しトータルで省エネをサポートする三浦工業。他社機器も含めて工場全体を管理するサービスも手掛けている。

三浦工業は、低炭素、省エネ、コスト低減など顧客のニーズに応えるため、小型貫流ボイラーの開発・販売や工場プロセス全体をサポートするなどのサービスを展開している。


3月に販売を開始した「SQ-CS型」はボイラー効率99%、システム効率は100%を達成した。同製品はO2センサーを標準搭載し、排ガス中の酸素濃度を示す排ガスO2濃度を常時計測。燃料の熱量変動に対して自動調整する「O2トリミング制御」を行う。これにより、e―メタンなどのカーボンニュートラル燃料への転換時にも対応が可能だ。また、エコノマイザの構造を改良することで、燃焼ガスからの熱回収量が向上し、従来機よりも1%高い、ボイラー効率99%を達成した。

ボイラー効率99%の「SQ-CS型」


こうしたボイラー単体で性能に磨きをかけたのに加え、複数台で稼働するボイラーを効率的に運転してトータルで省エネを図る。ボイラーは設置台数や供給する水温など、運転条件によって効率が変化する。この中で、最も効率が良い「エコ運転ポイント」を見つけ出し、このポイントで優先的に運転してシステム全体での効率向上を図る。ボイラ技術ブロックの山本英貴ブロック長は「小型貫流ボイラーが普及し始めた1989年から注力してきた通信技術が生きている」と強調する。


この通信技術を応用し、事業所の省人化、環境負荷低減につながるサービスが「ミウラヒートコネクト」だ。同サービスではデジタルツインで、保守管理の省力化や設備の利用最適化を図る。具体的にはボイラーの蒸気で加温するほか、ヒートポンプで未利用の低温廃水や循環冷却水の廃熱を使って温水供給することなどができる。

工場設備やエネルギーを管理 自社のフィールドエンジニアが対応

今年4月には、工場全体をサポートする「まるごとメンテナンスサービス」を開始した。同社以外の製品もIoTで監視し、クラウド環境で工場の設備管理やエネルギー管理を行うほか、管理データに基づく設備の常時見守りから復旧に向けた対応などを提供する。「当社の予防保全のノウハウを生かし立ち上げた。当社が設備の一次受付を行い、全国に配置した約1200人のフィールドエンジニアが対応する。顧客は工場管理から解放され本業に集中できる」。山本ブロック長はこう説明する。同社ではハードとソフトの両面に注力し、顧客のニーズに高いレベルで応えていく構えだ。

インフォメーション

NTTグループ

サステナビリティカンファレンス表彰式を開催

NTTは5月21日、「NTTグループ サステナビリティカンファレンス2025」を開催した。表彰式では、全169施策のエントリーからオンライン開催・審査を経て選ばれた最優秀賞5施策の代表者がそれぞれプレゼンを行った。MVPに輝いたのは、NTTデータグループの「バッテリートレーサビリティ基盤の実現」、NTT東日本の「エネルギーの地産地消による循環型社会の形成」、NTTコミュニケーションズの「森かち~カーボンクレジットで森林の価値を創造」。NTTの島田明社長は「どの取り組みも素晴らしく、共創の精神をグループ内外にさらに広げていってほしい」と講評を述べた。

関電工/道北風力


勇知ウインドファームが運開

関電工は6月4日、EPC(設計、調達、建設)事業者として約5年にわたり建設に携わってきた勇知ウインドファーム(北海道稚内市、7万2200kW)の工事一式が同月末で完了するのを前に、記者説明会を開催した。同発電所はユーラスエナジーホールディングスのグループ会社である道北風力が手掛け、GEベルノバ社製の出力4200kWの風力発電機を18基設置。2月3日に運転を開始した。社会インフラ統括本部工務ユニット再エネプロジェクト部の久松克也部長は、「陸上風力の案件は2030年くらいまであり、今後も工事は続くと考えている」との見通しを語った。

電気事業連合会


今田美桜さんを起用した新CMがスタート

電気事業連合会は5月27日、俳優の今田美桜さんが出演する新Webムービー「伝えるのは今だ」の配信を開始した。第1弾はエネルギーミックス篇、第2弾はヒートポンプ篇。敏腕刑事役に扮した今田さんが犯人に迫る場面で、日本のエネルギー事情や課題、省エネや電化の重
要性などを伝えるドラマになっている。「エネルギーのこと、知ってほしいのは今だから」を決め台詞に、「若い世代を中心とした多くの皆さまに、エネルギーをより身近に考えてもらうきっかけになればとの思いを込めている」と担当者は話す。Webムービーは電気事業連合会の特設ページで見ることができる。

岩谷産業


全国マルヰ会70周年記念大会を開催

岩谷産業の販売店組織マルヰ会は6月3日、「全国マルヰ会70周年記念大会」を大阪市で開催した。販売事業者など約1100人が一堂に会し70周年を祝った。牧野明次会長(同社会長兼CEO)は「LPガス業界は少子高齢化、脱炭素対応などの課題に直面している。これらをチャンスと捉え、組織力、保安力をさらに強固なものにしていきたい」と述べた。

東海大学


室内環境や都市環境の創造について発表

「2025NEW環境展」が5月28~30日、東京ビッグサイトで開催された。東海大学建築都市学部の山川研究室は、快適な室内環境や都市環境の創造に関する研究を紹介。冷房のない工場での暑熱対策として、夜間の外気を利用して日中に蓄積された熱の残留を防ぐ「ナイトパージ(夜間換気)」や、スプレー断熱防水材の活用が熱中症リスク軽減に効果的と発表した。

東京電力ホールディングス/東京都交通局


EVバス導入モデルの実証を開始

東京電力ホールディングス(HD)は6月9日、東京都交通局と共同で大都市でのEVバス導入モデルの構築を進めると発表した。東電HDは、車両性能や効率的な充電方法の検証に加え、路線バス向けのエネルギーマネジメントシステムの実証に取り組む。都交通局は北自動車営業所にEVバスを2台導入し、10日に営業路線での運行を開始した。

【特集2】再エネ活用の切り札「EBLOX」 設備の三位一体運用で安定供給

三菱重工エンジン&ターボチャージャ

三菱重工エンジン&ターボチャージャのトリプルハイブリッド発電システム「EBLOX(イブロックス)」が注目を集めている。同社は2021年に経済産業省の「分散型エネルギーリソースの更なる活用に向けた実証実験」に参画。3年以上かけて製品化にこぎつけた。


EBLOXは、天候に左右される太陽光などの再生可能エネルギー電力の変動を蓄電池で吸収、平準化させる。加えて、天候変化や昼夜の時間帯変化に発電量が左右されないディーゼルやガスエンジンによる発電がバックアップする。


これらの電源を制御するシステムが「COORDY(コーディー)」だ。多様な電力供給ニーズや、オフグリッドでの運用にも対応できる。また、AIとの連携により、電力需給を想定したデマンド予測や、気象予測を活用した太陽光発電電力の想定なども可能だ。


エンジン・エナジー事業部の大矢巧氏は「EBLOXはさまざまな組み合わせが可能。一言で言えばケースバイケース。工場向け、ビル向け、離島向けなど、お客さまと一緒にシステムを作り上げていきたい」と抱負を語る。今後、さまざまな用途に広がりを見せそうだ。

多様な用途に対応する