産業用熱利用の電化戦略 ヒートポンプ本格実装への挑戦
産業分野における脱炭素対策を
前進させようとする動きが生まれている。
これまで化石資源を燃やして作っていた温水や
蒸気などの熱エネルギーを電気に置き換える方策だ。
とりわけ低温度領域ではヒートポンプ導入が
有効な手段の一つとされている。
生産プロセスへの導入には初期投資の問題や
特殊なエンジニアリングを要するなど課題がある。
そんな壁に立ち向かうべく、業界を挙げた挑戦が始まっている。

産業分野における脱炭素対策を
前進させようとする動きが生まれている。
これまで化石資源を燃やして作っていた温水や
蒸気などの熱エネルギーを電気に置き換える方策だ。
とりわけ低温度領域ではヒートポンプ導入が
有効な手段の一つとされている。
生産プロセスへの導入には初期投資の問題や
特殊なエンジニアリングを要するなど課題がある。
そんな壁に立ち向かうべく、業界を挙げた挑戦が始まっている。


井関 8月26日に開催されたGX実行会議において、「エネルギー需給構造の強靭化総合パッケージ」が打ち出されました。
宮本 社会のデジタル化を背景に、日本全体で電力需要の増加が見込まれる中、原子力を含めた電源確保に向けた方針を国として明確に示していただいたことは非常に心強く感じています。大規模な電源開発を行う際には莫大な資金が必要となります。さらに近年では、資機材価格や労務費単価の高騰などもあり、さらなるコスト上昇が懸念される中、国に明確な支援施策や方針を打ち出していただくことで、金融市場からの信頼が高まり、安定的な資金調達環境の構築につながるものと考えます。既に金融機関からも「国の方針が明確であれば融資の判断がしやすい」という声をいただいており、今後の旺盛な資金需要に対応していく上でも、電力業界が電源開発への投資へ踏み出しやすい環境が整備されることは極めて意義深いと評価しています。今後、具体的な施策の検討が進められることから、当社としても議論動向を注視していきたいと考えています。
井関 イラン情勢の悪化による地政学リスクが継続しています。
宮本 燃料価格の変動が電気料金に反映されるまでにはタイムラグがあることや国の負担軽減措置が10月分まで適用されることから、足元の電気料金への影響は一定程度抑制されていますが、原油価格の変動影響が数カ月遅れて反映されるLNG価格や、当社の燃調単価に大きな影響を与える石炭価格が上昇基調にあることを踏まえると、今後は、その影響が拡大してくるのではないかと懸念しています。当社としては、引き続き、燃料価格などの動向を注視しながら今後の対応についてもしっかりと検討していきます。
井関 そうした状況下では、冬の需要期に向け政府による電気料金補助が再開される可能性もあります。
宮本 電気料金の負担を懸念して、冷暖房などの使用を控えるといった健康上のリスクを防ぐためにも、必要な時に安心して電気を使える環境を整えるという観点で、政府による支援策は大変ありがたいものと受け止めています。一方で資源の乏しい日本においては、省エネや節電に対するマインドを社会全体で維持することも極めて重要です。国による価格支援に頼り切るのではなく、エネルギーを効率的、有効的に使うという啓蒙活動を国と事業者が連携して継続していくことも不可欠であると考えています。照明のLED化が急速に進み、エアコンや冷蔵庫といった常時稼働する高消費電力機器の省エネ化も着実に進展しています。このため、一層の省エネ・CO2削減を進めていく上では、需要側設備の電化を進めていくことも大変重要な取り組みです。当社としても、発電時におけるCO2排出原単位の引き下げを大前提として電化を推進し、社会全体の環境負荷低減に貢献していきます。
井関 7~9月にかけて「夏の生活応援&省エネチャレンジキャンペーン」を展開していましたが、反響はいかがですか。
宮本 「よんでんコンシェルジュ」会員でご家庭向け自由料金プランに加入するお客さまを対象に、電気料金に応じて付与するポイントを通常の5倍に拡充したほか、抽選で3000人に夏のおすすめアイテムなどを進呈する特典や前年同月よりも使用量を削減できた方の中から抽選でポイントを付与する特典も用意するなどしたことで、大きな反響をいただきました。昨年は申込制のキャンペーンを実施しましたが、「知らなかった」「手続きを忘れた」というお客さまの声もあり、今年は、ポイントを通常の5倍に拡充する特典は申込不要で自動的に適用することにしました。当社としては、本施策を通じて、夏場の家計の負担軽減や省エネへの取り組みに一定程度寄与できたのではないかと考えています。

井関 2027年3月期は増収減益の見通しです。
宮本 第1四半期は、豊水に恵まれたことなどにより前年同期に比べて増益となるなど、順調なスタートを切ることができました。とはいえ、今年度は、昨年度の好決算の一因であった退職給付会計における数理計算上の差異償却影響の剥落や諸費用の増などの減益要因があり、通期では減益を予想しています。引き続き、電気事業をはじめとした各事業において、収支拡大・費用削減の両面から取り組みを推進し、年度当初に公表した経常利益400億円を確実に達成した上で、中計で掲げた650億円に少しでも近づけられるよう全社を挙げて取り組んでいきます。
過去に高い目標を達成してきた経営体力を基盤に、成長投資を成果と利益に結びつける取り組みを進める。
GXの推進における天然ガスの再評価を糧に、他社と協業し国内外の脱炭素化を着実に前進させ、「東京のガス会社」にとどまらない企業価値を伝えていく。
【インタビュー:笹山晋一/東京ガス代表執行役社長】

井関 今夏は令和8年熊本地震や千葉県豪雨など、自然災害が相次ぎ発生し、エネルギーインフラの災害対応の重要性が改めて認識されました。
笹山 ガス業界内では元々、相互に応援・連携する体制が整っています。10年前の震災の際には当社も復旧応援隊を派遣しましたが、今回の熊本地震では西日本エリアのガス会社が中心となって担い早期に復旧することができました。これまで、当社が大規模な応援を受けるような事態はありませんでしたが、首都直下地震などの大規模災害が発生した場合には、われわれが全国から応援を受ける立場になります。そうしたさまざまなケースを日頃から想定して準備しておくことが重要だと考えています。
7月27日には、大規模な地震の発生とともに想定以上の停電が重なるなど、非常にシビアかつ過酷な状況を想定した防災訓練を実施しました。歴史的にも、関東大震災の際には台風による火災が複合的に発生しました。そのため、最近の訓練ではテーマを都度定め、複合的で極めて過酷な条件を想定した備えを行っています。これで全てが万全と言えるわけではありませんが、各地で起こるさまざまな事象の要素を取り入れながら、当社グループとして安定供給を確実に担保できるよう取り組んでいます。
井関 ガスの全面自由化や導管部門の法的分離など経営・事業体制が変化していますが、災害時の対応に影響はないでしょうか。
笹山 災害や緊急時には行為規制などのルールも緩和・一部適用除外される仕組みとなっています。大規模災害時には当社グループ単独だけでは対応に手を取られることも多いため、一定の体制を確保されている新規参入事業者の方々にもお力を借りながら対応します。そうした新規参入者も含めた形で防災訓練を行っており、業界全体として強固な体制を組めるようにしています。また、ガス業界内にとどまらず、東日本大震災時には他社へLNGを融通しましたし、過去に千葉県で台風による長期間の停電が発生した際には東京電力さまに非常用発電機をお貸ししました。「困ったときはお互いさま」という意識で、業界を超えた相互安全・レジリエンスの担保を図っています。

井関 7月28日に熊本県熊本地方で震度7の大規模地震が発生しました。西部ガスの供給エリアでは、地震の規模に対して被害規模が小さく翌日には復旧しました。10年前の教訓が相当生きたのではないでしょうか。
加藤 今回の地震では、震度7という非常に大きな揺れを観測しましたが、お客さまへの供給影響を最小限に抑え、翌日には復旧することができました。過去の大規模災害で得た教訓を踏まえた、設備の耐震化や供給停止方式・基準の見直し、復旧訓練の継続などの成果が大きく表れたと考えています。また、発災直後から現場社員や協力会社が迅速かつ的確に対応してくれたことも重要な要因でした。一方で、自然災害は想定を超える形で発生する可能性があります。今回の対応を改めて検証し、新たな課題を洗い出すことで、さらにレジリエンス(強じん性)の高いエネルギー供給体制の構築に努めていきます。お客さまに安心してガスをご利用いただけるよう、不断の備えを続けていきます。
井関 昨年度スタートしたグループ中期経営計画(2025~27年度)では、新たな財務目標にROIC(投下資本利益率)を掲げています。
加藤 当社ではROIC経営を単なる財務規律や過去の投資を評価する指標ではなく、将来の成長につなげるための経営手法として位置付けています。これまでの多角化経営により確かに事業のすそ野は広がりましたが、ポートフォリオの中に低収益な事業が混在することになってしまいました。この数年間で収益性の低い事業については整理、撤退を進め、事業ポートフォリオは着実に筋肉質になってきています。とはいえ、バランスシートには依然として低収益な資産が存在しており、資本効率を一層高める観点から、保有資産を精査し、より収益性の高い分野に厳選して投資を振り向けるべく選別を行っているところです。
井関 それと並行して、経営の根幹として重視されているのが人的資本経営ですね。
加藤 人的資本経営とは循環型成長戦略でなければならないと考えています。福利厚生の充実や賃上げだけすれば良いのではなく、人への投資によって、組織能力やエンゲージメントを高め、他社が容易に模倣することができない競争優位性を生み出さなければなりません。その結果として、資本効率が向上し創出したキャッシュを再び社員の処遇改善や将来の成長投資に振り向けることでさらなる成長の循環を作りだすことができます。
井関 成長に向け重点事業領域として見据えているのは。
加藤 現在、グループの成長領域を四つの柱に整理し経営資源を集中させています。中核である総合エネルギー事業、安定収益を支える不動産事業、成長に挑戦するひびきLNG基地を活用したグローバルエネルギー事業、そして地域のお客さまの暮らしに寄り添う食関連事業とウェルビーイングです。少なくとも私の在任中はこの四つを成長の柱にしていく考えです。その戦略の基盤として①資本コスト経営②サステナビリティ経営③グループネットワーク経営④人的資本経営を位置付けており、これらを一体的に推進することで、持続的な成長と企業価値の向上を目指していきます。
井関 成長のエンジンとなるのがグローバルエネルギー事業ですね。
加藤 大手エネルギー会社のような海外の上流権益獲得を目指すのではなく、ひびきLNG基地を活用した独自の成長を目指しています。LNGの積み替え輸送や、LNGバンカリング、「ガッシングアップ/クールダウン(GUCD)」、LNG船向けサービスなど、基地インフラを活用した収益機会の拡大を目指しており、GUCDは昨年も非常に高い収益を生みました。さらに3号タンクが稼働する29年以降は、需要期と非需要期の需給ギャップを活用したLNG運用が可能になります。ベトナムなど成長市場でのインフラ案件への厳選した出資・参画を進めながら、ひびきLNG基地のポテンシャルを最大限引き出していきます。昨年4月にJERAとひびきLNG基地の戦略的活用で提携し、これを機に入社4年目の優秀な若手社員を出向させました。最先端のグローバルエネルギー事業を現場で学び、将来の事業を担う人材への成長を期待しています。



井関 4月に沖縄電力社長に就任しました。どのような思いで引き受けましたか。
横田 打診があったのは年が明けた頃でした。全く想像もしていなかったことで非常に驚きましたし、即座に返事をすることができず「少し考えさせてください」と伝えるのが精いっぱいでしたね。その後、家族にも相談しながら1週間ほど悩み抜きました。最終的に引き受ける決め手となったのは、当社が直面している課題の性質と、自分自身のキャリアが合致していると思い至ったからです。私は入社当初から送配電部門で鉄塔巡視や設備の更新作業、基幹系統の建設現場での検査といった技術の現場を歩んできました。当社は現在、送配電部門だけでなく、発電側でも老朽化した設備の更新時期を迎えており、設備投資が非常に膨む時期にあります。同時に、脱炭素に向けた取り組みも進めていかなければなりません。さらに、2022年のウクライナ危機で燃料価格が高騰し、当社の財務基盤が大きく毀損してしまっている状況にあります。こうしたバランスを考慮しながら確実に対応していかなければならない重要な局面において、一つひとつ丁寧に課題を解決していくことが今の時期に求められているのではないか、現場で鍛えていただいた私だからこそできる対応があるのではないか―と考え、バトンを受け取る決意をしました。
また、これまでAIやDX(デジタルトランスフォーメーション)の活用による業務効率化、資機材調達の効率化を図る「PXプロジェクト」などにも携わってきました。物価高騰が続く中で適切な資機材調達を行うため、現場と調達部門が一体となった改革に取り組み、成果を上げています。この取り組みを調達分野に留めることなく、全社的な業務効率化へと推し進めていく役割を担っていきたいと考えています。
井関 25年度の業績は減収増益となり、業務効率改善の成果が着実に出ている印象です。
横田 中期経営計画における25年度の連結経常利益120億円という財務目標には届きませんでしたが、厳しい事業環境下で81億円の連結経常利益を確保できたことは一定の成果だと捉えています。目標未達の背景には、想定以上の物価高騰がありました。資機材によっては20%以上値上がりしており、それらが利益を圧迫しました。一方で、株主還元については、財務基盤が着実に回復してきたことを踏まえ、26年度の年間配当予想を前年度から20円増配の1株当たり50円としました。今後も安定供給や成長投資、財務状況とのバランスを図りながら、DOE2・0%以上を維持する方針のもと、安定的かつ持続可能な株主還元に努めていきます。
井関 足元ではイラン情勢などの燃料調達や価格面への影響が懸念されています。
横田 当社はLNGをオーストラリア、石炭をオーストラリアおよびインドネシアから調達しているので、ホルムズ海峡の封鎖などが調達を直接的に脅かすことはありません。とはいえ、価格面での影響は避けられません。石油価格の上昇に連動してさまざまな物価が上がっており、世界的な船舶用燃料のひっ迫などにより、輸送コストへの影響も生じています。特に当社の場合、離島での発電燃料の全てが石油です。石油自体は国内の製油所からしっかり確保できているため調達量の問題はありませんが、価格面での影響を注視している状況です。
井関 新たな中期経営計画がスタートしました。
横田 県内の経済団体などが主導する「GW2050 PROJECTS」において、50年に向けた沖縄の成長戦略として、県内総生産を現在の約4・9兆円から11兆円規模に拡大していくといったビジョンが示されています。当社もこの動きと連動しながら成長していくに当たって、26年から30年までの足元5年間を「未来基盤創造フェーズ」、その後は「価値創出フェーズ」へと移行し、50年のありたい姿の実現を目指します。2段階に分けたのは、送電網の増強や供給力の確保といった成長に必要な設備投資が目白押しだからです。利益を確保しながらしっかりと投資を行い、まずは電気事業における強固な基盤を作らなければ、将来の大きな需要を取り込む「価値創出」を実現することなど、とてもできません。
井関 未来基盤創造フェーズにおける具体的な取り組みは。
横田 主に四つの経営テーマを設定しています。一つ目が、発電・送配電・小売の各部門でサプライチェーン全体を強化し、安定供給と収益力の向上を両立することです。二つ目が、AIやデジタル技術を活用する「AX」によって業務オペレーションの改革を進めること。三つ目が、低炭素化に向けた沖縄エリアの「ジャスト・トランジション」を進めることです。24年に運転を開始した牧港ガスエンジン発電所(浦添市、4万5000kW)に続き、牧港火力発電所では、天然ガスを燃料とする高効率な新規電源(約13万kW)を、32年度中の運転開始を目指しています。そして四つ目が、 沖縄の成長と連動し、まちづくりや新産業の創出などグループの強みを生かした事業領域の拡大を進めることです。

中東情勢を機にエネルギー安全保障の重要性が改めて浮き彫りとなった。
既存電源の活用も含めた現実的なトランジションを模索しつつ、最大の課題・大間原子力を次の段階へ進める。
【インタビュー:加藤 英彰/電源開発社長】

井関 4月に社長に就任されました。故菅野等前社長からどのような思いを託され、経営に臨みますか。
加藤 菅野前社長とは、企画担当役員として日頃から経営課題について共に悩み、経営戦略や計画について議論してきました。そのためか、社長という職責を託される際には特に具体的な指示はなく、ただ「あとを頼む」と言われ「頑張ります」と答えました。当社の事業領域は時間軸が極めて長い設備産業であり、扱う商材は公共性の高い電力です。それにもかかわらず、ますます短期的な意思決定を求められる状況にあり、このジレンマをどう共存させて経営のかじ取りをしていくかが難題です。覚悟はしていたとはいえ、社長を支える立場と全責任を負う立場では重圧が全く違うと実感しています。きちんと課題に向き合い、的確に経営判断していきたいと考えています。
井関 これまでの会社人生で印象に残っていることは。
加藤 新入社員として最初に配属されたのが、松浦火力1号機の建設最終段階の現場で、とても活気のある現場でした。まさに「電源開発」という社名を体現する仕事を入社早々体験できたことが印象深いですね。その後、豪州の炭鉱権益取得、2004年の完全民営化、そしてカーボンニュートラル(CN)に向けた「BLUE MISSION2050」の策定など、会社の重要局面でさまざまな仕事に携わってきました。
井関 事業環境が不透明さを増す中で、どのような会社を目指していきますか。
加藤 当社は、他の電力会社ができないことに取り組むことを目的とする特殊会社として設立されたという経緯があります。だからこそ、さまざまな国・地域でバランスの取れた設備構成と事業ポートフォリオを築くことができました。先行きは不透明ですが、AI社会は電気がなければ成り立ちません。どのようなアセットの持ち方をすれば、発電の価値を最大化できるかは、国や地域によって異なりますので、先進国ではアセットの新陳代謝を追求し、東南アジアではPPA(電力販売契約)付きのガス火力や水力開発に取り組むといった具合に、それぞれの環境にとって最適なアセットを選択することが求められます。

エネルギーフォーラムがLPガス関係者や都市ガス関係者などを対象に独自に取材を進めたところ、現時点で次のような事実関係や疑問点が浮上している。
●イオンモール熊本のLPガス供給事業者は、福岡酸素(本社=福岡県東久留米市)。同施設には9.3t級のバルク容器が設置されており、そこからガスが供給されている。同施設の場合、法令上は原則として「液化石油ガス法」の特定供給設備(3t以上10t未満)に該当。保安責任は、ガス供給事業者側(供給設備=バルク貯槽〜メーター)と商業施設側(消費設備=メーター以降の施設内配管・厨房機器など)の双方にある。
●※福岡酸素は8月5日、経産省に次の内容を報告。〈令和8年熊本地震発生により、何らかの要因で建物内のLPガス配管が損傷しガス漏洩が起こり、滞留したLPガスに着火した可能性があるとのことだが、現時点では原因の特定には至っていない。詳細については、現在、調査中〉
●関係者によれば、イオンモール熊本にはLPガス仕様の※ガス空調設備(吸収式冷温水機か)が複数台設定されているとみられ、主に空調用に利用されている模様。ガスエンジンを併設したガスコージェネレーションシステムなのかどうかは、現時点で不明(※経産省が3日明らかにしたところによると、ガスコージェネやガス発電機は設置されていないことが確認された)。イオンモール施設から駐車場を挟んで東側には天然温泉の施設があり、そこに向けて熱供給が行われている可能性もある。
●LPガスは、バルク貯槽からまず※大口径の中圧管で供給され、その後、低圧管に減圧されているとみられる。エネルギー機器のある棟は、バルク貯槽が設置されている場所の近隣にあり、中圧で供給されている可能性がある。店舗が入っている商業施設(主に飲食店)には低圧で供給されている。
●公開されている映像を見る限り、今回の爆発は2階南側中央部付近(ガス空調設備のある棟の隣)で起きている。(※フロアの天井部に敷設されているフードコート向けの低圧管がどこかで破損し、大量のガス漏れが発生した可能性がある)
●ガス業界の関係者によれば、配管からの漏洩に関しては、耐震性に優れる中圧管の損傷は敷設場所的にも考え難い。また、低圧管にしても最近は地震に強い金属製のフレキ管が主流(※ガス業界関係者によると、イオンモール熊本の施設内の低圧管ではフレキ管ではなく、白ガス管=配管用炭素鋼鋼管が使用されていた可能性が高いという。低コストや耐食性などの面から現在でも屋内配管では白ガス管が採用されるケースがある。白ガス管の問題は地震などの大きな衝撃により、ねじ接合部からのガス漏れがフレキ管に比べ発生しやすい傾向があるとされること。また経年劣化も進みやすいという)。
●問題の一つは、地震の揺れで自動的に機能するはずのガス遮断弁がなぜ作動しなかったのかだ。遮断弁はバルク側と飲食店側にそれぞれ設置されているという。関係者によれば、バルク側の遮断弁はI・T・O製で、主に震度5強以上作動型と震度6強以上作動型の2種類がある。嘉島町の震度は6強相当とみられているが、イオンモール熊本の立地する場所は遮断機能が作動するほどの揺れではなかったのではないかとの見方も(※実際、地震直後の避難時の動画などを見ると、陳列物が飛散していない店舗が散見される)。そうなると、遮断弁は作動せず、ガス供給がそのまま続いていた可能性は否定できない。
●一方で、バルク貯槽側の遮断弁は正常に作動しており、ガス機器や配管内に残留していたガスが破損個所から漏洩したと見る向きもある。(※イオンモール熊本のガス設備事情に詳しい関係者によると、バルク側にある遮断装置自体は正常に作動し、ガスを遮断していたという。ただ、遮断装置の接合部などで問題が発生していた可能性は否定できず、現時点で調査中)
●※バルク貯槽からのガス供給が遮断されていたとしても、太い中圧管も含めれば遮断装置以降のガス設備内に残留していたガスは相当な量になるとみられる。破損したガス管からLPガスが漏れ続け、空気より重いという性質上、施設南側中央部付近にある空間にLPガスが充満(※空気中の濃度で2.1%〜9.5%)。地震発生から約1時間20分後に何らかの形で着火し、爆発した可能性がある。(※一部報道によると、一般公開されているフロアアップには載っていないが、爆発したとみられる施設南側中央部には、自動販売機のある喫煙所があり、そこにガスが溜まり、自販機の温度調整機能が着火源になった可能性があるという。また、その隣には階段を挟んで従業員の休憩所があったという)
イオンモール熊本は05年10月10日、「ダイヤモンドシティ・クレア」としてオープンした。16年4月の熊本地震で損傷し、18年7月20日に復旧したのを機に、西側エリアを増床した「ウエストスクエア」が完成。24年10月から25年春にかけて段階的に約40店舗を刷新するリニューアルを実施。26年6月13日に直近の大規模リニューアルが完成し、新装オープンしたばかりだった。東日本大震災の教訓から経産省の推進する「大規模施設のLPガス化政策」の一環として、防災拠点に位置付けられ再整備された商業施設でもある。それが、大爆発したわけだ。
エネルギーフォーラムでは、経産省ガス安全室、イオンモールの両者に取材を依頼したが、いずれも「現在調査中のため答えられない」と回答だった。
いずれにしても、テレビやネット上で公開されている車載カメラなどの映像を見る限り、すさまじい大爆発だったことは間違いない。もし施設からの避難が遅れていた場合、さらに多くの犠牲者が出ていたことは容易に想像がつく。映像を見た多くの国民が「やはりLPガスは危険」と思っても不思議ではないだろう。実際、XなどのSNS上では、今回の事故を巡ってさまざま憶測が飛び交っている。その一方で、大地震などが起きると被災地の避難所や仮設住宅などで、LPガス供給が大きな役割を果たしているのも、歴然とした事実だ。※事故調査委員会を設置したイオンモール側や、経産省などには、同様の事故を二度と繰り返さないためにも、徹底した原因究明が求められる。
※太字がアップデート部分

米国・イラン戦争の停戦の行方が混とんとする中、
かねてからのバイオ資源争奪戦がさらに激化する可能性がある。
ホルムズショックにより今こそ石油代替燃料の普及は加速するのか。
沖縄での先行導入への動きが始まったE10ガソリン、そして
国際規制強化の行方が注視される船舶燃料を巡る現在地は―。
バイオエタノール一大生産国の米国の最新事情なども踏まえ、
供給面やコストの課題を見据えた次世代燃料導入の現実解を探る。

【アウトライン】外圧受け国内でも高まる導入機運 需給両面で最適な形追求へ
【レポート】新規需要開拓や炭素削減が進展 進化続ける米国の現在地


井関 中東情勢が緊迫した状況が続いています。当面の電力需給への影響をどのように見ていますか。
西山 電気は価格弾力性がそれほど高くなく、電力需要は「気温」や「経済活動」に大きく左右されます。今夏は酷暑が予想されていますが、九州エリアも安定供給に必要な予備率3%をしっかりと確保しています。注視しているのは、中東情勢に伴う経済活動への影響です。産業用・業務用を中心に需要が下振れすれば、当社の収支に影響します。
井関 2026年度の業績予想には影響をどう織り込んでいますか。
西山 今期の業績予想については、足元で燃料価格や卸電力取引所の価格が高めに推移している状況や、年度末に向けて原油の先物価格が緩やかに下がっていく見通しなどを総合的に踏まえて策定しています。物価や燃料価格のさらなる上昇による費用の増加や経済活動の停滞などによる電力需要減など、中東情勢の緊迫化による影響は未知数であり、小売販売電力量の想定には反映していません。
燃料価格の上昇に関しては、火力発電用燃料の価格変動を毎月の料金で調整する「燃料費調整制度」があるため、単年度の収支では一時的な「期ずれ影響」が出るものの、制度の仕組み上、最終的な収支への影響はニュートラル(中立)との認識です。ただし、燃料価格が高い水準のまま推移した場合、料金に転嫁できない部分が発生する恐れがあります。そのため、引き続き緊張感を持って状況を見極めていきます。
井関 料金改定を視野に入れていますか。
西山 これが一過性の変動であれば、拙速に料金改定へと動くべきではないと考えています。九州エリアは現在、「人」「水」「電気」がそろう地域として企業の進出、引き合いが非常に強いという好循環の中にあります。この勢いを削がないためにも、料金見直しは慎重に判断していきます。
井関 脱炭素化と電力の安定供給の両立に向けた取り組み状況を教えてください。
西山 安全性の確保を大前提に、供給安定性、経済性、環境性の両立を目指す「S+3E」の観点は大変重要です。特に日本の場合はエネルギー資源の大部分を海外に依存しているので、安定供給に軸足を置く必要があります。その中で私たちは中長期的な視点に立ち、安定供給に加え、CNへの取り組みが不可欠だと考えています。
当社では、2050年のCN実現へ、供給側における「電源の低・脱炭素化」と、需要側における「電化の推進」を柱として、事業性と安定供給を前提にサプライチェーン全体でGHG(温室効果ガス)の排出を抑制していきます。お客さまに対しても、排出原単位が低い電力を供給することなどによって、社会全体の排出削減に貢献していく方針です。
井関 半導体工場の誘致やデータセンター(DC)建設などにより、電力需要の増加が見込まれます。
西山 広域機関が公表した26年度の供給計画では、35年度断面における九州エリアの需要は25年度比で3%程度増加するとの想定が示されています。一方で、足元の半導体工場の集積やDCの新規建設に関する報道などを踏まえた当社独自の想定では、将来的に需要が20~30%程度増加すると試算しています。情勢変化によって時間軸が後ろ倒しになるかもしれませんが、拡大トレンドは間違いありません。
これに対する取り組みは着実に進んでいます。今年3月には、西部ガスと共同開発した「ひびきLNG火力発電所」が運転を開始したほか、運転開始から40年以上が経過し高経年化が進む「新小倉発電所」のリプレースについて、第3回長期脱炭素電源オークションで落札し、33年度の運転開始を目指しています。いずれの発電所においても将来的には水素などのカーボンフリー燃料の導入を視野に入れており、引き続き、安定供給と脱炭素を両立する最適な電源ポートフォリオを目指します。


井関 まずは、2025年度の業績の振り返りから。決算としては減収減益となりましたが、全体をどう評価していますか。
中川 売上高は、エリア内外での需要獲得による小売販売電力量の増加はありましたが、燃料価格が比較的低水準で推移したことによる燃料費調整額の減少などにより減収となりました。経常利益は、昨年1月に島根原子力発電所2号機が営業運転を再開し、年度を通じた安定稼働により、収支面で大きなプラス効果をもたらしましたが、卸・小売事業における他社との競争進展の影響などに加え、送配電事業の利益減、市場金利の上昇等に伴う支払利息の増加などもあり、減益となりました。
井関 26年度の業績見通しについてはいかがですか。中東情勢は極めて不透明で、先を読むことが難しいと思いますが。
中川 おっしゃるとおり、中東情勢を含め先行きは非常に不透明です。26年度は、原子力発電所の定期事業者検査による稼働の減少などに加え、足元で高騰している燃料価格が年間を通じて高止まりする前提のもと、大幅な燃料費調整制度の期ずれ差損などによる減益を見込んでいます。さらに、今後の燃料・資機材調達環境の悪化や国内製造業の生産動向に伴う電力需要の変動など、収支に影響を与えるリスクは多く、リスク管理のさらなる高度化に取り組むとともに、電力需要の獲得、島根原子力発電所の安定稼働、市場の価格変動を捉えた取引による収益獲得や経営全般にわたる効率化を図るなど、引き続き業績の改善に向けて取り組んでいきます。
井関 燃料調達への影響は。
中川 長期契約が多く、直ちに電力供給に支障が生じるような影響は受けていません。それでも中東情勢の混乱が長期化すれば調達価格上昇などの懸念がありますので、しっかりと注視していく必要があります。
井関 ナフサ価格の高騰による産業用電力需要への影響はありますか。
中川 瀬戸内地域は石油化学コンビナートが集積しているため、ナフサ価格高騰の影響を受けているという話を各方面から聞いています。ただ、当社の電力需要の実績を見る限りでは、現時点で極端に大きな需要減といった変化は見られません。決して楽観はできませんが、政府側でもサプライチェーンの目詰まりを解消するためのきめ細かな調整を進めていると聞いており、今後の動向を注視していきます。
井関 4月に5年間の「Action Plan 2030」を発表しました。ポイントをお聞かせください。
中川 当社グループは昨秋、40年度をターゲットとして新たに「中国電力グループ経営ビジョン2040」を策定しました。このグループ経営ビジョンの実現に向けた実行計画として、26年度から30年度までの5年間を対象とする「中国電力グループ中期経営計画」を策定し、その概要を取りまとめたものが今回のアクションプランとなります。経営ビジョンで示した30年度の経営目標(財務目標・サステナビリティ目標)の達成に向けて、具体的な施策・取り組み内容を一段と深掘り・拡充した点が特徴です。将来の成長に向けた「稼ぐ力」の強化と、PBR(企業価値)向上の蓋然性を高めるための実行計画として、「成長戦略」「財務戦略」「サステナビリティ戦略」の三つの柱で整理しています。
また、この5年間を、経営基盤を回復させるステージから一歩踏み出し、「持続的な成長に向けた変革と基盤づくり」を力強く進める期間と位置付けており、島根3号機の新規稼働および柳井新2号機(LNG火力)の建設や次世代送配電ネットワークの整備など、大型投資をはじめとする将来の成長に必要な取り組みを着実に実行し、グループ経営ビジョンに掲げる30年度の経営目標の達成に向けて取り組んでいきます。


覚書はその第5項で「ホルムズ海峡における将来の管理および海事サービスを定義する」主体を、事実上、イランと認めている。オマーンとの対話、ペルシャ湾岸諸国との協議、また国際法遵守という制約は加えられているが、この「対話・協議」から米国は除かれている。イランはオマーンおよび湾岸諸国のみを相手に、同項で言及された「ホルムズ海峡沿岸国(すなわちイラン、オマーン)の主権的権利」を根拠に、軍事的優位を背景として自国本位に海峡管理を「定義」し得る。イランはホルムズ海峡の無償航行を当面60日間認めるが、その後はこの「定義」次第となる。
4月末にイラン最高指導者モジタバ・ハメネイ師は、ホルムズ海峡に「新たな管理」を導入すると声明。イラン政権は5月に「ペルシャ湾海峡庁(PGSA)」を、海峡通航を管理する「法的機関・代表当局」として設け、覚書合意成立後も、通航する商船に対してPGSAへの事前申請および、一方的にイラン領海内に設定した航路での通航を要求している(国際海事機関(IMO)が定める従来の分離航路はオマーン領海を通っていたが、今回の開戦後イランは当海域に機雷を敷設し、北側の自国領海通過を商船に強要してきた)。また60日間の無償航行に関して、PGSAは安全・環境等の「サービス」及び関連の「保険」料金の一時免除、と説明しており、将来これらの名目で事実上の通航料を課す意図を隠さない。
5月20日にPGSAが公表した「管轄区域」は、フジャイラ等のUAE沿岸をも含んでいる。直後のIMO会合において、UAE、サウジアラビア、クウェート、カタールおよびバーレーンは共同声明を出し、PGSAという機構自体を拒絶。5月27日に米財務省もPGSAを制裁対象に加えていた。しかし今回の覚書により、イランはその海峡管理を強く正当化できる。海峡航路、「サービス・保険」料その他の通航方式、管轄区域等をめぐりイランと湾岸諸国は鋭く対立するが、米国が航行自由確保に最終的に関与しない以上、湾岸諸国の抵抗も何らかの妥協を探る「条件闘争」に止まろう。既に6月23日にオマーンはイランとの間で「通航管理・サービス」費用に関する共同作業部会の立ち上げを合意している。
杉本達治前知事の〝セクハラ辞任〟からはや半年。1月に就任した福井県の石田嵩人知事は4月28日、経済産業省で赤沢亮正大臣と向き合った。緊張した面持ちで用意していた原稿を読み上げ、使用済み燃料対策や地域振興などを要望した。
石田氏はノンキャリアの外交官出身の36歳。1月の県知事選では、一部保守系が支援に回ったとはいえ、自民党の支持候補を被った。出馬表明するまでは国民民主党員だったといい、国政選挙や党一地方選への出馬を模索していた節もある。
「知事選で負けた後に国政選挙を狙っていたのでは。本人もまさか当選するとは思っていなかっただろう」(ベテラン県議)
たとえ勝利を想定していなかったとしても、いま彼が背負うのは4原発が所在する福井県の知事という重責だ。原子力政策上、最重要自治体の一つと言っていい。

赤沢氏との面談後のぶら下がりでは、珍しい出来事があった。
県の担当者が記者団に対して、「知事が(面会を)振り返る時間がほしいと言うので5分ほどお待ちください」と告げると、石田氏は記者から見えない位置へ。県職員と想定問答を繰り返したのだろうか。直後の質疑では暗記した文章をそのまま話しているようで、その言葉から「意志」は感じられなかった。
「原子力のレクを受けても、理解こそするが、自分のものになっていない。まだアイドリング状態だ」「みんなで育てていくしかない」(県政関係者)
関西電力が福井県に立地する3原発の使用済み燃料プールの容量はひっ迫している。使用済み燃料が行き場を失えば、原発は運転を停止せざるを得ない。命運を握るのは青森県の六ヶ所再処理工場だ。福井県は長らく使用済み燃料の県外搬出を求めており、関電は28年度に同工場への搬出を開始する方針だ。では、もし竣工に遅れが生じたら、原発は運転停止に追い込まれてしまうのか。
回避策はある。敷地内の乾式貯蔵施設の建設だ。同施設の利点は多岐にわたる。「一義的には中間貯蔵より、使用済み燃料の安全な保管という観点で重要だ」(滝波宏文参議院議員)、「国が運転延長・新増設の方針を示す中で、国全体で使用済み燃料の保管容量を確保する必要がある。その上で大きな意義を持つ」(津島淳衆議院議員)
ただ、県は前知事時代から、建設の認否を判断するのは「日本原燃が原子力規制委員会に対して、再処理工場の設計・工事計画の説明を終了した時」としている。竣工でも、操業開始でもなく、「設計・工事計画の説明終了時」というタイミング設定からは、少しでも早く使用済み燃料の〝逃げ場〟を確保したい思いが透けて見える。「6月議会の前に説明が終わっていてほしい」(冒頭のベテラン県議)
一方、原子力政策に揺るぎない「意志」をもって対峙するのが、青森県の宮下宗一郎知事だ。ぎこちなさが残る石田氏とは異なり、いつも会見では余裕しゃくしゃく。記者からの質問もクールにかわす。
宮下氏が市長を務めていたむつ市には、東京電力ホールディングスと日本原子力発電が出資する中間貯蔵施設がある。2024年に操業を開始した。ところが、宮下氏は3月31日、同施設への新規搬入について、「26年度は容認しない」と表明したのだ。再処理工場の26年度中の竣工が「確実に遅れる」とした上で、「なし崩し的に燃料だけが搬入される環境をつくるわけにはいかない」との考えを示した。
今年度には柏崎刈羽原発5、6号機から約60tの使用済み燃料の輸送計画がある。来年度以降も宮下氏の拒否姿勢が続けば、88%という6号機の使用済み燃料プールの貯蔵率は上がり続け、さらなる号機間輸送などの対応を取らざるを得ない。27年度を予定する東海第二、敦賀両原発からの輸送にも黄信号が灯る。
「待った」をかける宮下氏の下で核燃料サイクルは回るのか。不安をよそに、関係者は「原子力との共存共栄が知事のスタンス」と口をそろえる。
「知事は原子力や核燃料サイクルの重要性、エネルギー安全保障上の意義を十分に認識している。今回の判断は審査の終わりが見えず、竣工が延期され続けていることに対する県民の不安や懸念を代弁したものだと受け止めている」(神田潤一衆議院議員)
使用済み燃料の保管で得られる核燃料税は、青森県やむつ市にとって貴重な財源だ。宮下氏がこの重みを理解していないはずがない。一方で、50年という保管期限が守られるのか、竣工の遅れで県内経済はどうなるのか─。県民の思いに向き合うのは知事としての責務だ。
宮下氏に近い若手県議は「原子力規制委員会に対して『そろそろいい加減にしろ』という意味合いもあったのではないか」と推し測る。「知事は常に今後何が起こるのか、相当先まで読んだ上で行動する。今回も早く前に進めてもらわないと、地元から反発が出てくるという意思表示だろう」
下北地域は核燃料サイクルの循環による関連施設の操業が経済を支える。むつ市には施設満杯の使用済み燃料が運び込まれ、六ヶ所村では再処理が行われ、大間町ではウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)を燃料に原発が稼働する。東通村でも原発が動き出す─。再処理工場の竣工は、下北地域が描くグランドデザインの結節点だ。
足踏み状態が続く現状に、原子力推進派からは「左翼団体のようにデモを起こせば、国からカネを引っ張れるんじゃないの」と冗談めいた声すら聞こえてくる。立地地域の思いを蔑ろにしてはならない。