渡邊開也/リニューアブル・ジャパン株式会社 執行役員 管理本部副本部長兼社長室長
当社は、一般社団法人再生可能エネルギー長期安定電源推進協会(略称:REASP「リアスプ」)という業界団体を、発起人会社の1社として、2019年12月に設立した。
2020年1月に同協会設立の記者発表会を行い、大勢のメディアの方にご参加いただいた際、記者の方から「協会として再エネに関して何か数値目標のようなものはありますか?」という質問を受けた。その際、当社の代表取締役であり、同協会の代表理事である眞邉勝仁が「個人的な見解ではありますが、2050年には再エネを半分以上にしたい」と回答し、会場が「オオー」という雰囲気に包まれたことを今でも覚えている。
それが、つい1年ちょっと前のこと。その後、20年6月「エネルギー供給強靭化法」の成立、10月に菅首相の「2050年カーボンニュートラルの実現を目指す」という所信表明演説など、再生可能エネルギーに対するモメンタムはすっかり変わったのではないだろうか。
2020年というのは、もしかしたら、数十年後に日本が脱炭素社会の実現に向けて、大きく舵を切った年として認識されることになるかもしれない。
脱炭素社会の実現は、誰が主人公(当事者)なのか?
では、2050年カーボンニュートラルの実現は、誰が担うのだろうか。
昨今、世界中のどこかしこで連日環境問題が取り挙げられている。日本国内においても、ウェブやTVのニュース等で、脱炭素、再生可能エネルギーに関する話題を見ない日はない。ただ、それらの情報が、政府や自治体、一部の企業が掲げる目標自体が独り歩きしており、日常生活のシーンでは「何か他人事のように感じさせてしまっているのでは?」と、立ち返ると感じてしまうのは私だけではないと思う。
裏を返すと、その実現のためには、1人1人が「自分がその主人公(当事者)である」という意識を持つこと、それが脱炭素社会の実現に向けて一番大事なことの一つだと理解し、行動することが本質なのではと感じている。
1人1人が主人公(当事者)になるためにできること
ただ、環境問題は総論、興味がある、何かしなくてはいけないと多くの方が意識、無意識を問わず思うところではあるものの、具体的に何をしたらよいのかイメージが沸かないというのが本音ではないだろうか。
ところで、これを読んでくださっている方にご質問させていただく。
質問その1「月の電気代はいくらなのか?」
質問その2「ではその電気代に対する『電気の使用量』はどのくらいだろうか?」
実はこの質問は、私が打ち合わせの時や採用面談、学生向けのインターンシップなどで実際に聞いていること。電気代がいくらなのかは、(請求書は見ているので)5千円くらい、1万円くらいと答える方は、ある程度いる。しかし、使用量に関しては私の個人的見解ですが、8割以上の方が気にしていないような印象を受けている。単位すら正確に覚えていないのでは?(ワット? アンペアでしたっけ? という会話も(笑))
このやり取りの後に私は、こう続ける。例えば、月1万円の電気代を払っているとすれば、地域によって違うが、東京ではおよそ単価は27円/kW時で、350~400kW時/月くらいの消費量になる。仮に400kW時/月の電気を使用しているとすると、日本の場合、その4分の3くらいが二酸化炭素を排出している化石由来の電源である、つまり300kW時の電気は、便利な生活を享受するための引き換えとして、二酸化炭素を出していることになる――と。
そうすると聞いている方は、ぐっと「自分が電気を使う際に二酸化炭素を排出しているんだ」という感覚になるわけだ。私は、この感覚、すなわち毎月請求書(スマホアプリで見れる!)を見て、金額だけを確認するのではなく、「絶対量(数字)を意識する」という習慣を1人1人が持つことこそが脱炭素社会の実現に向けて大事なことだと確信している。
電気の消費者(需要家)として、100%でなくても10%、20%、それは個々の事情に合わせて電源を選択したいという意識変化が生まれ、徐々に脱炭素社会に向けて動き出すのではないだろうか。
「本を探すなら、アマゾンで検索」ではないが、電気の使用量を意識し、そのうちどのくらい二酸化炭素を排出しない電源なのかをチェックするといったマインドシェアができたら、脱炭素社会の実現はできると考えている。これはほとんどの方がやっていないが、実は、お金もかからない、誰でも今すぐできること。当社もその一翼を担いたいと考えている。
【プロフィール】1996年一橋大学経済学部卒、東京三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行。2017年リニューアブル・ジャパン入社。2019年一般社団法人 再生可能エネルギー長期安定電源推進協会設立、同事務局長を務めた。